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後年に『アルビオン戦役』と呼ばれることになる戦争は、こうして突如として終了した。トリステイン側の勝利である。神聖アルビオン帝国は滅亡する運びとなった。 だが、トリステインにとってこの勝利はとても苦いものとなっていた。実質ガリアの突然の介入がなければ、自分が敗北していたかもしれないのだ。 そのような流れから、旧アルビオン領の支配権をめぐる国際会議に、トリステインとゲルマニアに加え、本来同盟国ではないガリアが列席したのは当然といえた。 ハルケギニアの歴史上、この会議は難航する、と思われた。かつて第一回聖帝会議の折、サー・グレシュフルコに『会議は踊る』と酷評されたように、この三国が集う会議は決まって、内容が傍論にそれるのが通例となっていたからだ。 だが、予想外なことに、ガリアが折れた。 みな欲深い要求をしてくると予想していたが、当の『無能王』ジョゼフは、 「会議よりも今日の晩のメニューが気になる」 と、軍事上重要な拠点の割譲のほかは、ほとんど要求を行なってこなかった。 戦争の第一人者であるガリアがこのような様子であるから、戦争に少ししかかかわらなかったゲルマニアは、要求すること事態ためらわれたのだった。 結果、アンリエッタの常態とは思えぬ働きぶりもあって、アルビオンの領土は、大半をトリステインが管轄する運びとなったのだった。 とにかく戦争は終わった。誰もが、突如として訪れた平和の予感に胸をときめかせた。 だが、ガリアの王女、イザベラだけは不満であった。 わざわざアルビオンにまで出向いて功績を挙げたのに、当のジョゼフには何の評価も得られなかったのだ。自分なりにガリアのことを思っての行動だっただけに、余計堪えた。だが国際会議で、すでにガリアの功績は王の発言により半ば隠されてしまっている。また、彼女の行動を知る者は会議に参加しなかった。 結果、彼女はガリアの首都、リュティスに与えられた自分の城で怒鳴り散らすしかなかった。 「全く忌々しいね! なんで親父はあのヒス女王を勝たせるまねなんざしたんだい! それにアルビオンの領土の大半をくれてやっちまってさ!」 手に持ったワイングラスから、血のように赤いワインが零れ落ちる。零れ落ちたそれは、真紅のじゅうたんを汚らしく染め上げるのだった。 「さすがに、無能王と呼ばれるだけのことはあるね。あんなに良い手ごまがそろっていて、アルビオンひとつ自分のものにできないなんてさ!」 侍従に当り散らしていたイザベラであったが、そのとき、ガリア王からの手紙に目を通し、ほくそ笑んだ。 「だが、今度の仕事は面白そうだね……親父もたまにはいいことを考えるじゃないか」 イザベラは手紙の書かれた羊皮紙をくるくると丸め、それを持ってきた使者に話しかけた。 「あんた、ビダーシャルとかいったね。あんた、アレかい? 野蛮なエルフなのかい?」 「野蛮なのは君達蛮族のほうであろう。だが、私がエルフであることは否定するつもりはない」 「気に入らないねえ。まあいい、この依頼、北花壇警護騎士団が引き受けたよ」 「久しぶりだねえ、ガーゴイル」 「任務は何?」 相変わらず無愛想な従姉妹に、イザベラは憤怒の表情を見せかけた。が、我慢する。 あの娘にぎゃふんといわせる任務なんだよ。ここは冷静にならなくちゃ。 「おや、つれないねえ。今度は大物だよ。いつもの冒険ごっことはわけが違う。くれぐれも心してかかりな」 イザベラは思わずほくそ笑んだ。 「相手は、伝説のガンダールヴだ。そいつを殺りな」 いつもは全くの無表情で通すシャルロットは、このときほんの少しだけ表情を動かした。 「トリステインの?」 「そう、あんたもよく知る二人組さ。それ以外に誰がいるってんだい? あんた馬鹿じゃないのかい?」 そうは行っては見たものの、目の前のシャルロットが馬鹿ではないことはイザベラが百も承知していた。 ガーゴイル! あんたも同じだ、私の親父と。私の取り巻きの貴族連中と。内心では私のことを見下してさッ! さぞ面白いでしょうね、ガーゴイル。正当な血族である完璧な父親に愛されて。何一つ馬鹿にされることなく育ったお前に、私の、無能の父親に人形扱いされてきた、今までの私の気持ちがわかるもんかい! でも、この任務でちょっとは私の気持ちが分かるでしょうよ! 「もし、任務を果たしたら、あんたの母親」 いつまでたっても無言を貫き通すシャルロットに堪えられなくなって、イザベラは自分から話しかけることにした。 「母様?」食いついてきた。よしよし。 「解毒剤、報酬に上乗せしてやるよ」 今度こそシャルロットの瞳が揺れ動く。 戦争も終わり、学徒兵が帰ってきたこともあって、トリステイン魔法学校はいつもの喧騒を取戻していた。 中庭では生徒達が自分の使い魔とコミュニケーションをとり、図書館では、露伴がタバサをアシスタントに漫画の原稿を描いている。 だが、露伴の見るところ、タバサの様子がおかしい。時々手を止めては、露伴の顔を伺うようなまねをしている。今も、台詞を考えているような顔をしながら、露伴の手元をチラチラと見ているようであった 「どうした、タバサ。調子でも悪いのか?」 タバサはフルフルとかぶりを振った。違うらしい。だが、彼女は決心した風に、 「相談がある」 「なんだい? 僕に相談? ブチャラティかコルベールのほうが適任じゃないか?」 露伴は驚いた。 自分は他人の相談に乗るようなタチじゃない。 だが、タバサは、 「露伴でないと駄目」 とのことらしい。 「しかたないなあ、で、どんな悩みなんだ?」 「具体的にはいえない。けど、大切なものが二つあって、今もってるひとつを手放す代わりに、なくしたはずのもうひとつの大事なものをとり戻せるかも知れないとしたら、どっちを選ぶ?」 どういうことだ? 「えらく抽象的だなぁ」 「……ごめんなさい」 露伴はとりあえず漫画を描く手を止め、タバサの顔に向き直った。 「まあ、あやまるようなことじゅあない。そのなくしたものってのは、それ以外に取戻す方法はないのかい?」 「ほぼ絶望的」 「手放すほうは、手放すと見せかけてとっておくことは?」 「無理」 まるで謎賭けのようだ。それともタバサはこの露伴に何か隠しているのか? 「う~ん。なんともいえないけど、セオリーどおりに行けば、僕は両方取れる機会を待つね」 「そんな機会がなかったとしたら?」 「ないとしても、僕のキャラクターには、自分から何か大事な者を手放すような真似はさせない。手放すとしても、対価を確実に得られると確証してからだな。そういうのが取引の基本だと僕は思う」 「そう……ありがとう」 タバサは弱弱しく、だが、何かを決心した風にうなずいた。 「で、結局何がいいたいんだ?」 「露伴、私の母様のこと、覚えてる?」 露伴は思い出した。以前、タバサの母親を『ヘブンズ・ドアー』で診察したのだった。何者かに毒でやられたタバサの母親をしかし、露伴は治すことができなかったのだ。露伴はその事実を、苦い思い出とともに記憶の奥底にしまってある。 「ああ」 「もし、仮に、私に何かあったら、母様をお願い」 「……ああ、いいとも。だが、なぜ急に?」 そこまで言ったとき、タバサが急に活気づいた風に原稿に顔を埋めたのだった。 「そんなことより、この原稿、今日中に台詞を入れないと」 「? そうだったな。今日は急いで早めに仕事を終わらすとするか」 露伴は、なんとなく、タバサの頭をなでてみた。 なんとなく、タバサの顔が赤くなったような気がした。 タバサの姿が学院から消えたのは、その翌日のことである。 一人の学生が寮から消え去ったわけだが、トリステイン魔法学院は動かなかった。 タバサの部屋はきれいに整頓されていたし、何より、タバサは前にもそうやって学院を抜け出して授業を受けなかったことが多々あるからであった。 だが、露伴には一抹の不安がある。 なぜタバサはあの日、自分の母親のことを言い出したのだろうか? しかも頼む、などと。まるで、これから自分の身に異変でもあるかのように? 「ひょっとして、何かの事件に巻き込まれたんじゃないだろうな?」 今日、露伴は図書館のなか、たった一人で仕事をしていた。だが、どうにも仕事がはかどらない。タバサの行方が気になるのであった。 「そんなに気になるのかい、あの娘っ子が」一人のはずの部屋に、露伴以外の声が響き渡る。 「いたのか。つーか、あったのか。デルフリンガー」 「おめー、久しぶりに発言したってのにその扱いかよ!」 「僕としたことが。刃物を出しっぱなしにしてるとは。危ない危ない」 「ちょ、ちょっと棒読みくさいぞその台詞! やめて! ちょっとは話させて!」 「分かったよ、で、何のようだ?」 「いや、うら若き恋の予感がしてだな。それで」 パチン。露伴は勢いよく剣を柄に収めた。 「……」 少しばかり剣を抜き出してみる。 「ごめんなさいごめんなさいもう生意気言いません許してくださいだからもう少し喋らせて」 「で、なんのようだ?」 「兎も角、あの娘っ子は『かあさまを頼む』って言ったんだろう。じゃあ、その『かあさま』の様子を見に行ってみないか?」 「それはいい案だな」 「だろ。ナイスだろ? だから」 パチン。 露伴は矢も盾もたまらず図書館を飛び出した。 「露伴、君はタバサがガリアの王族だったことを知っていたのか?」 「何でそんなこと黙っていたのよ!」 さらりと何気なく質問するブチャラティと、激高するルイズ。その表情は静と動、対照的だった。 「ああ、知っていたさ。ルイズ、君達は今までそんなこと聞かなかったじゃないか。そんなことに答える義理も義務もないね」 彼らは馬に乗り、トリステインとガリアの国境を越えて、タバサの実家にいた。無論ルイズは授業をサボってのことである。先生方が頭を抱える様子が目に浮かぶようだ。 タバサの家に、唯一残った老執事が屋敷を案内する。その間に、露伴は大体のことを話して聞かせた。 タバサは、実はガリア王国の王族であったのだ。その秘密は、一行の中では、露伴だけが知っていた。彼女の実の父親は、現ガリア国王ジョゼフの兄シャルルであり、魔法の才能では王族随一。血統の点でも次期国王にもっともふさわしい存在であるといっても良かった。しかし、それを隠すように、トリステインに留学していたのにはわけがある。 「それは、タバサの家の執事から話すべきだ。僕が説明することじゃない」 露伴がうなずくと、タバサの老執事は涙を浮かべながら露伴の話を受け継いだ。 「はい、そもそも先代王の御世にこの悲劇は始まったのでございます」 「そういえば、タバサの家の紋章、王族だけど、不名誉印が記されていたわ。王家に反逆でもしたの?」ルイズは言った。彼女の言うとおりなら、タバサが人目を忍んでトリステインに留学していたのも分かる。 「反逆など! とんでもございません! シャルロット様。学院ではタバサ様と御名乗りにおらられていましたが、父君であるシャルル様は、今の無能王と比べてとても王家の才能に富んでおられる方でした。ですが、それをねたんだ無能王に、なんと痛ましいことか! 毒殺されてしまわれたのでございます!」 「もっとも、物的証拠はないがな」露伴が補足する。 「ですが、状況的証拠は有り余るほどございます。その直後、なんと言うことか、あの非道な無能王は、シャルロット様をもその手にかけようとなさったのでございます」 「タバサが?」ルイズが驚く。彼女にそんな過去があったとは。 「ええ、ある祝いの席で、君側の奸が、シャルロット様の杯に心を狂わせる毒を仕込んだのでございます。それを察知した母君が、とっさに身代わりになってその毒を飲み干してしまわれたのです」 露伴は、その光景を、タバサの視点で見聞き、知っていた。その光景がフラッシュバックとなり、露伴の心に再現される。 「私がこの杯を飲み干せば、王様、私達親子に反逆の心などないことがお分かりになりましょう。どうかシャルロットにはお慈悲を」 そういって、タバサの母はタバサから杯を奪い取り、一気に飲み干したのだった。 「その日から、母君は心を狂わされてしまわれました。その日からシャルロット様のお命を狙うものは消えましたが、なんと言う代償。なんと言う悲劇!」 老執事は感極まっておいおいと泣き出した。 「その日からシャルロット様は変わりました。以前は明るく活発な方でしたのに、暗く、誰とも打ち解けなくなってしまいました。そのようなシャルロット様に対し、あの無能王は、王家の影の仕事をシャルロット様に課すようになったのでございます」 あるときは吸血鬼退治、違法賭博の潜入捜査。ルイズには、とても同年代の人間がやれるような仕事とは思えない言葉が、老執事の口から次々と飛び出して行った。 「そして、先日も無理な依頼が無能王から課せられました」 「どんな内容だったんだ?」 「それは、露伴様。あなたを殺す任務です」 「何だって?」 「何ですって」 これには、誰も彼もが驚いた。 「はい、紛れもない事実でございます」 老執事が淡々と述べる。 「ひょっとすると、その依頼を無事成し遂げられたのであれば、母君を治す治療薬が得られるかもしれない、ともおっしゃっておりました」 「何だと……あの日の会話はそういうことだったのか」 露伴に、図書館でタバサとの会話が思い出される。手放す大事なものと、取戻せるかもしれないもの……くそっ、そういうことか! 「タバサのかあさまはどういう状態なの?」 ルイズの言葉に、老執事ははっとなった様子であった。 「ご案内いたします」 その部屋は、一見語句普通の寝室であった。 薄紅色のベッドに、女性が座っている。だが。 「誰じゃ、そなたらは! また私達親子をいたぶりに来たのか」 その女性は、老執事に案内されたルイズたちが部屋に入ってくるとたんに立ち上がり、薄汚れた人形を抱き、立ち上がった。野良猫のように威嚇をしている。 「シャルロット様の母君でございます。あの日から、この方は人形のほうをシャルロット様と勘違いしているのでございます」 「出てゆけ! でないとただではおかぬぞ。いとしのシャルロットには手を出させぬ!」 「……学院では、シャルロット様は、『タバサ』と御名乗りになっていたとか……実は、シャルロット様があの人形を母君に差し上げたときに名づけた名が、『タバサ』なのでございます」 「……」 「誰か! 誰かいないのかえ!」 沈黙が、女性の騒音の中に紡ぎ出された。 「僕がタバサに殺されていたら、彼女は正常に戻っていたのか……」 「いえ、露伴様。畏れながら私はそうは思いません。なぜならその提案を行なったのは、今まで迫害の限りを尽くしてきた無能王だからです。あの男が、シャルロット様を操る重要な『カード』を簡単に手放すとは思いません」 「なるほど、ジョゼフ王とは、人を物扱いするような人間なのか」 ブチャラティがつぶやく。彼の顔には静かな怒りの表情が見て取れた。 「はい。かの無能王は自分以外の人間を同じ人とみなしてはおりません」 「でも、こんなことって……」ルイズがしゃくりあげる。 「あの時、シャルロット様が屋敷にお帰りになった日のことでございます」 次の部屋に案内された一行は、先ほどとは違った意味で絶句した。 見たところ、部屋中の壁紙が無残に切り裂かれている。柱も何本か折れているようであった。 「先日、シャルロット様は母君をトリステインに連れて行こうとしておりました。すでにそのとき、ガリア王家に反逆しようと決めておられたのでしょうな。ゆるぎない決意の心を私は感じました」 老執事は続ける。 「ですが、そのとき一人のエルフがガリア王家から派遣されてきていたのです」 「エルフ?」ルイズが素っ頓狂な声を上げる。この世界でエルフといえば、ルイズたち人間の天敵ではないか。 「無能王はすでにシャルロット様の行動を見切っていたのでしょう。そして、シャルロット様とエルフはこの部屋で戦い……シャルロット様はお敗れになったのでございます」 「これが、その惨状か……相手は相当のてだれのようだな」 ブチャラティは部屋にできた傷をなでながら言った。そういわれると、その傷一つ一つが生々しい。 「ええ、いつか言ったでしょ。エルフは先住魔法を使うの」 「で、タバサはつかまったのか。どこに連れて行かれたか分かるか?」 「おそらくアーハンブラ城でございます。あのエルフは、私にここからアーハンブラ城まで、どのくらいかかるか聞いてきましたから」 「タバサは無事なのか?」 「はい。エルフは不思議な術を使ったので。シャルロット様は敗れはしましたが、無傷のご様子でした」 「そうか……」 「露伴、彼女を救いに行かないのか?」 「もちろん、いくさ。だが、君達には関係のないことだ」 「何言ってるの?私の使い魔の問題は私自身の問題よ!」 「それに、アルビオンであったガリアの王族の者――イザベラと言ったか――彼女の存在も気になるしな。俺も同行したい」 「ふたりとも……ふん。勝手にしろ。僕は警告したからな」 「おお! 皆様救出していただけるのですか!」 老執事はありがたい、といい、また泣き出したのであった。 アーハンブラ城は、砂漠の、ガリアとエルフとの国境地帯に建つ交易城砦都市である。 もともとはエルフが建造した城であるため、ハルケギニアの建築様式とは異なった、美しい幾何学模様の城壁があることで有名でもある。 ルイズたちが到着したとき、この時期には交易商人くらいしかいないと思われた。この町はオアシスに隣接する形で存在しているのだが、そのオアシスに、ガリア兵が三百人ほど駐留しているのが遠目にも見えた。 「どうするの?」 「決まっているだろ? ただの兵士なら問題ない」 ブチャラティは言い放つ。 「強行突破だ」 「ええ?」 ルイズが逡巡している間に、二人の使い魔はどんどん先に進んでいく。 「ブチャラティ、この兵士達は任せた」 「ああ」 「ちょっと待ちなさいよ」ルイズがあわててついていく。 「あ、何だ?」 城内の門扉に建っていた歩哨は、近づいてくる一人の男に気がついた。 「立ち止まれ、ここに入ってはいけない」 槍を構え、お決まりの言葉を口にする。 だが。 「ヘブンズ・ドアー!」 瞬間。 歩哨の意識は途絶えた。 「おい、あの男。様子が変だぞ」 オアシスの駐屯地で待機していた兵士が、一人の男と少女の接近に気がつく。 その男の瞳には、決意の炎が宿っている。 「何だ? やる気か?」 男は兵士の一団に近づき、 「き、消えた?」 跡形もなく姿を消した。 一団の男が急にうずくまる。 「どうした?」 「き、気分が……」 別の男は、その男の背中から、何者カの腕が飛び出していることに気がついた。 「お前、おかしいぞ。その、腕に見える物は一体何なんだ?」 「え?」 そのとき、接近してくる少女が目をそらしたことに誰も気がつかない。 「げぇ!」 背中から、先ほどの男が『生えた』。 その兵士は音も言わずにばらばらになった。 そして、彼の腕は、分離してまた別の兵士の腹に食い込み…… 「開け、ジッパー!」 混沌が、兵士達を襲った。 アーハンブラ城につれてこられたタバサは、ふと、外の兵士が騒いでいるような気がした。 もしかしたら、誰かが私を助けに来てくれたのだろうか? おとぎ話の『イーヴァルディの勇者』のように。私は、漫画『ブルーライトの少女』のように華麗に助け出されるのか? そんなはずはない。 かあさまがお倒れになってから、私はいつも孤独だった。 私はこれからも孤独であり続けるだろう。 いや、これからはそんな気遣いも無用か。 私はこれから狂うのだ。ビダーシャルと名乗るエルフの作る薬によって。 私の心は、かあさまと同様に。 それが、ガリアの考え出した刑。無能王の考えた娯楽。 「薬は、いつできるの?」 タバサは、一緒の部屋にいたエルフに、感情なく話しかけた。私ではこのエルフにはかなわない。たとえ今杖があっても、この男に勝利することはできない。 「もうすぐだ。だが、お前は怖いと感じたことはないのか?」 ビダーシャルは、何か作業を行なっていたが、その手を止め、タバサに顔を向ける。 「あなたには無関係のこと」 「そうだったな。私もそれほどには興味がない」 それはまさしく本音らしく、彼の表情にいっぺんの曇りもない。 だが、 「あの王との約束だが、その前に厄介が増えそうだな」 ビダーシャルは薬を作る手を止め、部屋を出て行く。 一体どういうことであろうか? タバサはため息をひとつ、ついた。 「かあさま……」 ビダーシャルが次の部屋に続くドアを開けると、 「見つけたぞ……ここか」タバサにとって信じられない男の声がした。 まさか、あのめんどくさがりの男が、ここまで? 「露伴……」 岸辺露伴は、そのドアを開けた。 果たして、目的の少女はそこにいた。耳の端が妙に長い、ルックスもイケメンの青年とともに。 「みつけたぞ……」 露伴のタバサを見る視線はしかし、その青年の体によって阻まれる。 「私はビダーシャル。お前達に告ぐ」 「なんだと?」 「すぐにここから立ち去れ。私は戦いを好まぬ」 「ならば、タバサを返すんだな、小僧」 ビダーシャルはまゆをピクリと動かせる。 「あの子か。それは無理だ。私は王と『ここで守る』と約束してしまったのだ」 「ならば戦うしかないだろう。僕とお前とは相容れない」 露伴はデルフリンガーをもって突撃した。先住魔法だかなんだか知らんが、先制攻撃してしまえば何も問題ない! 「『ヘブンズ・ドアー』!『先住魔法が使えない』」 露伴は確かに書き込んだ。だが、 「ふう、あくまでも戦う気か」 ビダーシャルの顔が『本』のページになる。だが、それも一瞬のこと。見る間に元の顔に戻っていった。 「ふむ。君は面白い技を使うようだな。だが、無駄だ」 露伴は思わず自分の顔を触ると、なんと自分の顔のほうが本になってしまっている。 「なるほど、その人の記憶を本にする能力か。どうやら魔法ではないようだな。どちらかといえば、我々の大いなる力に近い」 「何だとッ?!」 「お前の顔に書かれているぞ。『先住魔法が使えない』だと……なるほど、そういう使い方もできるのか」 ビダーシャルはあくまで冷静に言った。 ようやく本化が収まった露伴は、改めてビダーシャルを見やる。開幕以来、彼は一歩たりとも彼は動かなかったようである。 「一体何が起こっているんだ?」 「アレは『反射』だ。あらゆる攻撃、魔法を跳ね返しちまうえげつねえ先住魔法さ」デルフリンガーが言う。 「『反射』?」 「ああ、戦いが嫌いなんて抜かすエルフがよく使う厄介な魔法さ」 「戦いが嫌、か」露伴はつぶやく。 ビダーシャルが両手を挙げる。 とたんに周囲の石壁が無数の礫となって襲い掛かってくる。 露伴は剣で受け止めたが、なにぶん礫の数が多い。大半が受けきれず。露伴に切り傷や打撲傷となって痕を残していった。思わず倒れる。 「蛮人よ。無駄な抵抗はやめろ。我はこの城を形作る石の精霊と契約をなしている。この地の精霊はすべて我の味方だ。お前では決して勝てぬ」 露伴はゆっくりと立ち上がった。 「この戦いはお前の意思か?」 「違うな。これはお前が仕掛けたもの。我は戦いは嫌いだ」 「嫌いだと……フフフ」 「どうした。おかしくなったか? それとも引く気になったのか」 「断る。僕は漫画家だ。僕は人に読んで面白いと思ってもらうために、十六歳のころから漫画を描いてきた。決して人にちやほやされるためでじゃあない。それは僕自身の意思で行なってきたことだ……そして、僕は自分の意思でここに来た。状況に流されているだけの貴様がッ! 気安くこの僕に意見するんじゃない!」 「もはや語る言葉はない……か」 ビダーシャルはそういうと、新たな呪文を唱え始めた。 今度は石の床がめくりあがり、巨大なこぶしに変化した。 「所詮私に勝てないものの世迷言か」 「違うな。僕にとっての強敵はお前なんかじゃない。もっとも強い敵は自分自身さ。いいかい、もっともむずかしい事は! 自分を乗り越える事さ! ぼくは自分をこれから乗り越える!」 「『ヘブンズ・ドアー』!」 「無駄だ」 ビダーシャルの言ったとおり、反射で防がれた能力は、ビダーシャルではなく露伴の顔を本にし……彼の体を中に浮かせた。 「何ッ?」 ビダーシャルの体に衝撃が走る。高速で飛んできた露伴と正面衝突したのだ。 その速度は異常であった。たまらずにうめき声を上げる。肋骨が何本か折れたるほどの衝撃である。 「ぐぅ!!!」吹っ飛ばされ、全身打撲だらけでしりもちをつくビダーシャル。あるいはしりもちだけですんで幸運だったかもしれない。 「ど、どうだ。時速六十キロ……」衝撃を受けたのは露伴も同様のようで、彼の声も絶え絶えになっている。 「『時速六十キロで敵と衝突する』と書いた……これなら、反射で跳ね返されてもその行為自体が無意味だ……!」 「なぜ、ここまでして戦うのだ……?」 「貴様とは、魂の動機が違うんだ! 僕はこの戦いに明確な意思を持って望んでいる!」 彼の言うとおりだった。ビダーシャルはしりもちをついていたが、露伴は同程度以上の傷を受けたというのに、まだ両の足で立ち上がっている。 露伴は片足を引きずりながら、ビダーシャルに近づいていった。 「あえて言い換えるぞ……! 僕は上、お前は下だ……!」 「うぉおっ! この気力はっ! そこまでこの子が大事かッ!」 ビダーシャルは思わず後ずさった。だが、露伴は歩みを止めない。 「もういっぱあああああつッ!」 「『ヘブンズ・ドアー』!」 強烈な衝撃が、再び両者を襲う。 「ぐぉおおッ!」 ビダーシャルは初めてこの男に脅威を覚えた。 もし、この衝撃があと一発でも加えられたのなら、自分はどうなるか分からんッ! やつはもう一度体当たりをするだけの体力はあるのか? ビダーシャルが露伴を見やると、露伴は仰向けに倒れ、息も絶え絶えになっていた。露伴の肺が破れたのか、彼の呼吸音にヒューヒューという不吉な音が漏れ出でている。 もうあの男が動くことはない。 そう思った矢先に。 「もう……いっぱあああつ……」 露伴は這いずり回って、ビダーシャルに接近してきたのだった。 「何……だと?」ビダーシャルは全身に驚愕を覚えた。 「覚悟はいいか? 僕は……できてる……」 「ここは引くしかないか……」露伴に接近しないように、ビダーシャルは片手を挙げた。 指にはさんであった風石の力が作動する。彼は露伴と距離をとった。だが、それはタバサと距離を置くことも意味する。彼は護衛の任務を放棄する事を決断した。 風の彼方にビダーシャルの姿が消える。エルフは撤退したのだ。 「露伴!」 倒れた露伴の下に、タバサは思わず駆け寄る。 「ゴホッ」露伴は血を吐いた。 「急いで治療の魔法を!」そうタバサは思ったが、あいにく杖がない。 何かないか探していると、露伴が、 「君に……謝らなくちゃいけないことが……」 「なに?」思わず涙がこぼれそうになる。 「実は、僕が君とであったときに、僕は君を本にしていたんだ……」 「……」 「僕はその時点で君の不幸を知っていた……でも、僕はそれを知らん振りして君に接してきた……」 「……」 「許してもらおうとか、そういうことを思ってきたわけじゃない……でも、そのことは、君に知っておいてほしかったんだ……」 「……」 「……」 「……バカ……」タバサは涙目で、にっこりと微笑んだ。 こつん。 タバサのおでこを露伴のおでこにくっつける。 「……本当に……バカ……」 「……」 「……」 「それはいいが、できれば治癒の魔法をかけてほしいな」 はっとしたタバサは、近くに木の棒があるのを発見し、あわててそれを手に取った。 「自分の杖じゃないから、うまくいかないかもしれない」 「かまわないよ」露伴は、ニッと、笑った。 急造の杖から癒しの光が輝きだす。 「痛いッ!」思わずもだえる露伴。しかし、タバサがそれを押さえつける。 「我慢して。男の子でしょ」 城の外にいた護衛兵三百人を相手にしていたブチャラティとルイズは、ようやくその任務を終わらせた。いそいで露伴と合流しようと走って行った。が、ひたすら走るルイズと比べて、ブチャラティは、途中でであった兵士を相手にしなければいけなかった。 自然と、ルイズがかなり先行する形となった! 「あの部屋ね!」 ルイズが先ほどまで爆音をとどろかせていた部屋に飛び込む。おそらくそこで露伴はエルフと戦っているのだろう。音がないのを考えると、すでに決着がついているかもしれない。まさか、露伴が負けるような――? 「大丈夫? 露伴! 今助けに――」 露伴は果たしてそこにいた。仰向けに横たわって、タバサに抱きかかえられている。タバサはちょうど背を向けているので、ルイズには気づかないようだ。 だが、問題は二人の言動である。 「ああ! タバサ! もっとやさしく!!!」 「……なに、あれ……」 ルイズには、二人、というか、タバサが露伴に何をしているのか、角度の関係でよく見えない。 「そこはダメ! ダメ! ダメ! ダメッ!」 「……こう?」 「ああ! やさしくして、やさしく!」 「……」 「服を脱がせないでッ! 感じる!」 「難しい……」 「うああああ ダメ、もうダメ~ッ!」 「!!! !! !」 その地に、廊下をブチャラティが走ってきている。 「どうだルイズ。いたか、二人は?」 「え? い……そっその……あの……」 「どうしたっ!」 「アレッ! 急に目にごみが入った! 見えないわ!二人なのかよく分からないわ!」見てない。私はなぁーんにも見てないッ!
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『お菓子1年分』 ――出す……!出すが… 今回 まだ その時と場所の指定まではしていない つまり……私がその気になればお菓子の受け渡しは10年後、20年後も 可能だろう……ということ……!―― 『オレのストライカーユニット』 形状はほぼバイク、操縦方法もそれと同様である。 タイヤに相当する部分には大気中のエーテルと反応する呪文がびっしりと刻まれており、これを高速回転させることで 推進力を得る。船で言えば外輪船の要領である。 宮藤理論確立前のユニットが原型であるため、現行のストライカーユニットと比べると絶対性能は低い。 また、推力を得るためには発動機を大型化する必要があった為、必然的に機体そのものも大型化しており、取り回しも悪い。 利点があるとすれば、性能が低い分少ない魔力量でも起動が可能な事や、操作が空を「走る」感覚に近いため、 訓練次第で陸戦ウィッチでも機種転換が可能な事である。 機首にはブレンガンを改装した機銃が取り付けられている。 ちなみに、オレの機種転換の際には右足ギア、左足ブレーキの『ブリタニア仕様』に戸惑ってよく墜落したらしい。 『オレの槍』 長さ2m程の、使い込まれた鉄槍。穂は剣状、刃渡りは25cm程。 飾りが付いていたとおぼしき跡が見られるが、現在では飾りの類は取り付けられていない。 『オレの耳飾り』 剣を模した形状の耳飾り。左耳のみに着けている。 オレの髪が長いせいもあり、普段はよく見えない。 『手甲』 薄汚れた、銀色の手甲。 手の甲から肘関節付近までを覆うものだが、手首や指の動きを妨げない造りとなっている。 装甲の材質は不明だが、装甲の裏面には呪術陣が余す所なく彫られている。 また、表面には小さくガリア語が彫られており、掠れてはいるが『その身、唯護らんが為に』と読み取ることが出来る。 『技術班謹製の槍』 「投げ槍とか試したいが慣れ親しんだ槍をぶん投げるのは抵抗があるし、かといって2mの棒を何本も持っていくのは面倒」 という要望から作成された槍。 特徴としては伸縮機構を備えていることが挙げられ、これにより最短で1m弱程までに長さを詰めることが出来る。 また、穂の部分は着脱式になっており、用途に応じて付け替えることが可能。 ただし、伸縮機構が手動の為、収縮状態からの連射は難しい。 『出所不明の磁気テープ』 文字通りの磁気テープ。ラベルには『9月14日』と記されているが、その真贋や誰が録音したのかは不明。 →再生する 『守護騎士(シュヴァリエ)』 ガリア各地に発生する怪異を討伐し、国の守護を司っていた騎士達の総称。 任命の際には剣や槍といった栄誉の武器や防具、アミュレット等が与えられ、 ガリア各地に合わせた二つ名を名乗ることが許される。 また、当時の資料によると、これらの装備にはウィッチ由来の特別な加護が与えられており、怪異に対しても ある程度有効であったという。 当時は政治などに影響する程の高い地位を誇っていたが、ナポレオン統治時代の怪異との戦いにおいてその殆どが空位となる。 僅かに残った騎士達も後世の市民革命などにより没落。 現在では特に勇敢な軍人に贈られる名誉称号的なものとなっている。 軍人のみに与えられる勲章であるという点で、レジオンドヌール勲章とは異なる。 現在、レジオンドヌール勲章が最高勲章として定着しているとはいえ、守護騎士任命の栄誉はそれに匹敵するという。 . なお余談ではあるが、最年少授与記録は14歳の少年。 希少な男性のウィッチであったことに加え、ヒスパニアの怪異発生における義勇兵としての実績を買われての事であったという。 .
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『お菓子1年分』 ――出す……!出すが… 今回 まだ その時と場所の指定まではしていない つまり……私がその気になればお菓子の受け渡しは10年後、20年後も 可能だろう……ということ……!―― 『オレのストライカーユニット』 形状はほぼバイク、操縦方法もそれと同様である。 タイヤに相当する部分には大気中のエーテルと反応する呪文がびっしりと刻まれており、これを高速回転させることで 推進力を得る。船で言えば外輪船の要領である。 宮藤理論確立前のユニットが原型であるため、現行のストライカーユニットと比べると絶対性能は低い。 また、推力を得るためには発動機を大型化する必要があった為、必然的に機体そのものも大型化しており、取り回しも悪い。 利点があるとすれば、性能が低い分少ない魔力量でも起動が可能な事や、操作が空を「走る」感覚に近いため、 訓練次第で陸戦ウィッチでも機種転換が可能な事である。 機首にはブレンガンを改装した機銃が取り付けられている。 ちなみに、オレの機種転換の際には右足ギア、左足ブレーキの『ブリタニア仕様』に戸惑ってよく墜落したらしい。 『オレの槍』 長さ2m程の、使い込まれた鉄槍。穂は剣状、刃渡りは25cm程。 飾りが付いていたとおぼしき跡が見られるが、現在では飾りの類は取り付けられていない。 『オレの耳飾り』 剣を模した形状の耳飾り。左耳のみに着けている。 オレの髪が長いせいもあり、普段はよく見えない。 『手甲』 薄汚れた、銀色の手甲。 手の甲から肘関節付近までを覆うものだが、手首や指の動きを妨げない造りとなっている。 装甲の材質は不明だが、装甲の裏面には呪術陣が余す所なく彫られている。 また、表面には小さくガリア語が彫られており、掠れてはいるが『その身、唯護らんが為に』と読み取ることが出来る。 『技術班謹製の槍』 「投げ槍とか試したいが慣れ親しんだ槍をぶん投げるのは抵抗があるし、かといって2mの棒を何本も持っていくのは面倒」 という要望から作成された槍。 特徴としては伸縮機構を備えていることが挙げられ、これにより最短で1m弱程までに長さを詰めることが出来る。 また、穂の部分は着脱式になっており、用途に応じて付け替えることが可能。 ただし、伸縮機構が手動の為、収縮状態からの連射は難しい。 『出所不明の磁気テープ』 文字通りの磁気テープ。ラベルには『9月14日』と記されているが、その真贋や誰が録音したのかは不明。 →再生する 『守護騎士(シュヴァリエ)』 ガリア各地に発生する怪異を討伐し、国の守護を司っていた騎士達の総称。 任命の際には剣や槍といった栄誉の武器や防具、アミュレット等が与えられ、 ガリア各地に合わせた二つ名を名乗ることが許される。 また、当時の資料によると、これらの装備にはウィッチ由来の特別な加護が与えられており、怪異に対しても ある程度有効であったという。 当時は政治などに影響する程の高い地位を誇っていたが、ナポレオン統治時代の怪異との戦いにおいてその殆どが空位となる。 僅かに残った騎士達も後世の市民革命などにより没落。 現在では特に勇敢な軍人に贈られる名誉称号的なものとなっている。 軍人のみに与えられる勲章であるという点で、レジオンドヌール勲章とは異なる。 現在、レジオンドヌール勲章が最高勲章として定着しているとはいえ、守護騎士任命の栄誉はそれに匹敵するという。 . なお余談ではあるが、最年少授与記録は14歳の少年。 希少な男性のウィッチであったことに加え、ヒスパニアの怪異発生における義勇兵としての実績を買われての事であったという。 .
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「……それで?」 「それでと言いましても、これで終わりですわ」 不機嫌そうにこちらを見つめるマザリーニ枢機卿の視線を受け、 アンリエッタは居心地悪そうに身体を揺らした。 魔法学院にある客室の一つである。 「殿下、殿下。私は尋ねましたな、 アルビオンの貴族たちにつけいられる隙はございませんかと。 その時の殿下のお答え、まさか忘れたなどとは申されませんな?」 「え、ええ。勿論です」 「では、ワルド子爵に命じられたと言う任務は何ですかな」 なぜこうなったのだろう。 アンリエッタは自問した。 ルイズの部屋を出た後、魔法衛士隊のワルド子爵を召し出してルイズたちへの同行を要請した。 それは間違っていない筈だ。 ルイズたちだけでは心配だったし、ワルドはルイズとも浅からぬ縁である。 助っ人としては上出来だと自画自賛していたのだ。 なのに、なぜ自分はマザリーニに問い質されているのだろう。 「殿下。 最初からこの鳥の骨めにそのことを打ち明けられておられれば、 ワルド子爵のみにアルビオンに向かっていただければそれですんだのです。 殿下のなさったことは、徒にミス・ヴァリエールとそのご友人を危険に晒しただけと心得られよ」 言葉もなく身を縮ませる主君を見やり、 マザリーニはこの度の任務に従事すると言う面々に関する記憶を頭の隅から掘り出した。 魔法学院に行幸するに当たり、教師と生徒の大まかな情報は調べ上げてある。 トライアングルメイジであるキュルケとタバサは戦力として申し分ないし、 ギーシュもドットではあるがその魔法は戦闘向きだと聞いている。 魔法が使えないルイズは不安材料であるが、彼女を欠いてはキュルケやタバサが参加する名分が立たない。 二人のトライアングルメイジの助力が得られるならば多少の不安は甘受すべきだった。 してみると後は各人の政治的背景だけか。 ルイズ及びギーシュの両名ならばまぁよかろう。 トリステインの貴族でもあるし、王女の命を受けても問題はない。 キュルケもよしとしよう。ゲルマニアの貴族であるが、ツェルプストーとヴァリエールの仲の悪さは有名だ。 ルイズへの対抗心から志願したと言えば大問題にはなるまい。 問題はもう一人、タバサと呼ばれる少女である。 雪風のタバサ、その本名をシャルロット・エレーヌ・オルレアンと言うガリアの王族であり、 世が世なればアンリエッタ同様、一国の姫として君臨すべき存在でもあった。 「で、では、改めてワルド子爵だけに……」 「それこそまさかです。 一度口に出した言葉はもはや口には戻りません。 まして王族の言葉なればそれは絶対。万難を排してでも実現させねばならぬものです。 殿下、ご自身の言葉の重さ、まさか理解されておらぬとは仰りませぬな?」 アンリエッタの言葉を軽くいなしながら思考を進める。 現王ジョゼフ派にして見れば彼女は目の上のたんこぶであり、 出来ればこの世から消えて欲しいと願っている存在でもある。 だからこの任務で死亡したとしても問題はあるまい。 では今も尚ガリアに残るオルレアン派とでも言うべき貴族たちにして見ればどうか。 もしこの任務でタバサが死ねば、その一事を持ってトリステインへの宣戦布告の大義名分となすかも知れぬ。 「そもそもですな、殿下。 ワルド子爵は魔法衛士隊グリフォン隊の隊長であり殿下の近衛であります。 その隊長が何も言わずに居なくなれば、どれだけの混乱が起こると思うのです。 それを殿下は誰にも秘密にせよとワルド子爵に仰られた。 子爵が混乱しつつも私に相談しなかったら、 彼には職場放棄あるいは間者の疑惑がかかっていたかもしれぬのですぞ」 言いながらも、その手は一時も止まらずに幾つかの書類を作っている。 ワルドへの特別任務を命じる書状、ルイズへの書状。 そしてガリア現王ジョゼフ派への密書。 王女の任務には一言も触れず、ただ学院に居たタバサと言うガリアからの留学生がアルビオンに向かったと言うことだけを記す。 もし何か不具合があっても、ジョゼフ派がそれを知っていて見過ごしたとなれば、 オルレアン派の怒りはトリステインではなくジョゼフ派に向かう筈だからである。 あるいはそれを契機に対アルビオン貴族軍の同盟をガリアと結ぶことが出来るかも知れぬ。 打てる手を打ちながら、マザリーニは胸中で密かに悪態をついた。 先帝に拾われる前、街中で無頼を気取って過ごしていた時の様な口ぶりで。 ――――これも政治か。くそったれ。 子供の犠牲を前提においた政治なんぞ、くそったれだ。 もっとも、それしか出来ぬ自分が一番くそったれだがな。 /*/ その頃、シャルロット・エレーヌ・オルレアンこと雪風のタバサは自分の得物の手入れに余念がなかった。 荷作りは既に済んでいる ガリア北花壇警護騎士団として秘密任務に従事していた彼女には、 常日頃から荷物を纏めておく習慣があったからである。 「なぁ、さっきの姫さんの言ったこと、まだ気にしてんのかい?」 「気にしてない」 少女以外誰も居ない筈の部屋に声が生じた。 タバサは一瞬驚いたものの、その声に聞き覚えがあると思い出すと、 机の上に投げ出されたナイフに視線を向けてそっけなく言い返した。 “地下水”と呼ばれたそれは、紆余曲折を経てタバサの所有物となったインテリジェンスナイフである。 「あー、なんか顔に見覚えがあると言われて、動揺してたな」 「お、解るのかい、デルフの兄貴」 「おお、俺の力の源泉は使い手の心の震えだからな。使い手の心の機微に詳しくなけりゃあやってられねぇよ」 「さすがだねぇ、戦闘から恋の相談までなんでもござれってかい」 武器たちの話は止まらない。 そもそも食事も睡眠も必要なく、疲労すら憶えない彼らにとっての暇潰しはお喋りだけなのである。 実は地下水がタバサの元へやってきて一番喜んだのがこれであった。 自分の退屈を理解し、お喋りにも嫌な顔一つせずに付き合ってくれる存在に出会えるとは思わなかったのだそうだ。 操る人間を変えながらガリアからトリステインまでやってきた甲斐があったとしきりに喜んでいた。 なにしろ相手も自分と同じ喋る武器で、記憶を一部失っているとはいえ自分よりも永い間存在して来た先輩である。 デルフを兄と呼ぶようになるのに時間はかからなかった。 「ま、それはそれとして。姫さんのアレな、多分、オルレアン公のことだぜ」 「……父さま?」 首を傾げる。てっきりガリア王ジョゼフの娘であるイザベラの事だと思っていたのに。 そう言うと、地下水はけけけとおかしそうに笑った。 「イザベラは、ガリアから外に出たことねぇ筈だからよ、あの姫さんだって会ったことねぇと思うぜ。 オルレアン公はその逆で、先王の名代でいろんな国の式典に出てたからよ、 姫さんもその時に見たんじゃねぇのか?」 そう、とタバサは呟いて鏡を見た。 「似ている……そう、わたしと父さまは似ているのね……?」 幸せそうに呟いて、少女はそっと頬を緩めた。 /*/ 出発は明日と決まったが、だからと言って無断で出発して良いわけもない。 他の所はどうか知らないが、ルイズの家には規則を破るのが大嫌いなお方が居るのである。 任務とはいえ無断で学校を休んで戦地に向かったなどということが知れれば、 生きて帰ってこれても半殺しの目に遭うかもしれない。 それに、もう一つ懸念事項もあることだし。 そんな訳で、ルイズはオールド・オスマンにその旨の許可を取りに行くことにした。 夜半にも拘らずオスマン氏は未だ仕事中であり、ルイズの申請に快く許可をくれた。 ミス・ロングビルの後任の秘書は未だ決まっていない。 彼女がいつ帰ってきてもいいようにだとオスマンは言うが、 その実、後任として入った秘書が彼の痴漢行為に三日と耐えれないというのが真実らしい。 大猫に跨って自分の部屋に帰ってくると、扉の前に佇む人影が目に入った。 僧侶のような丸い帽子を被り、灰色の長衣に身を包んだ痩せぎすの男である。 「……マザリーニ枢機卿?」 「初めましてかな、ミス・ヴァリエール」 立ち話もなんだしと部屋に招きいれ、椅子を勧めた。 卑しくもトリステインの枢機卿がわざわざ出向いたのだ。 それ相応の理由というものがあるのだろう。廊下で話していい話題でないことは確かだった。 「さて、夜も遅いし、単刀直入に言わせて貰おうミス・ヴァリエール。 君が……ああ、いや、君たちが、だな。姫殿下より拝命した任務についてだ」 「失礼ですが、マザリーニ枢機卿。閣下はそれをどこからお聞きになりましたか?」 うってかわって醒めた声で尋ねたルイズに、マザリーニは逆に愉快そうに頬を緩めた。 彼はルイズのこの反応は当然だと思うし、それすら出来ぬ者に任務を任そうとも思わない。 問題は、それを当然と思う者が彼の部下の中にすら少ないということだ。 「無論、姫殿下からだ。 殿下は君たちだけにこの任務を与えるのが心配になったようでね。 魔法衛士隊の中から一人、君たちに同行するよう命じられたのだよ」 「聞いておりませんが」 「そうだろうな」 軽く流すと、マザリーニは一通の書状を取り出した。 封はされていない。ルイズに渡して中を確認するように言う。 それは枢機卿であるマザリーニの名において秘密任務を命じる旨が書かれており、 同時に任務遂行に必要な資材の徴発権を与える旨が記されていた。 「解ってくれると思うが、この件については姫殿下は何も知らない。 君を選んだのも、命令を下したのも、すべて私のしたことだ」 「……何か問題が起こった時、姫さまの楯になるおつもりですか」 書状を確認して懐にしまうとルイズは尋ねたが、マザリーニは軽く眉を上げることでそれに答えた。 「なんのことかな、ミス・ヴァリエール。この歳になると耳が遠くてね」 「失礼しました、マザリーニ枢機卿。 もしよろしければ、有能な水の使い手を紹介いたしますが」 「それはありがたい。私の知り合いに水の使い手は少なくてね。 その代わりといっては何だが、火の使い手には少々心当たりがあるのだが」 言いながら、袋に包まれた品物を取り出して机の上に置く。 その時に沈痛な表情がその顔を過ぎるのをルイズは気づかなかったが、 大猫はそれに気がついてニャァと鳴いた。 あれは、シオネに毒薬を渡した男と同じ表情だ 「その火の使い手が作った秘薬でね。 最近ゲルマニアで開発されたばかりの物だ。 人間など簡単に粉々に出来る爆発を生み出せる。 使い方はこの紙に書いてあるよ」 ルイズが息を呑み、微かに顔を蒼褪めさせながらそれを見た。 この任務の危険性は承知していた。 承知していたつもりだった。 怪我をすることも、死ぬかもしれないことも知っていた。 だがこんな風に、簡単に人を殺せるモノを渡されるとは思っていなかった。 「戦で出る損害についてだが、 私は死亡よりは行方不明の方が望みがあると考える。 行方不明だった者が数年経って帰還した例など有り触れているからね」 言いながら、マザリーニは胸中で自らを罵り続けた。 姫殿下の御為にと言えば聞こえはいいが、その実、自分が彼女に勧めているのは自殺だ。 もし殺されそうになったら、その前に自分で死ねと言っているのだ。 まだ若い、自分の三分の一も生きているか解らない少女に、 生の意味もまだ知らぬ少女にその命を自ら散らせと言っているのだ。 王女に仮初の希望をもたらすために死を選べと言っているのだ。 そして何より許せないのは、 ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールに関する調査が真実ならば、 彼女はそれを拒まないだろうことを確信している自分の性根の卑しさについてだった。 「それは……確かに。 最新式の秘薬ですか。随分と頼もしいことですね」 「許しは乞わんよ、ミス・ヴァリエール」 恐怖を抑えてルイズは笑い、マザリーニの苦悩はまた深くなった。 泣いてくれれば、罵ってくれれば、憎んでくれれば、 彼は自分を誤魔化す事も出来ただろう。 だがルイズはそれをせず、ただ笑って受け入れただけだった。 それを僥倖とは思わなかった。 自らに罪がないなどと思うことなど出来なかった 先帝の死後、自らの手を汚してでもこの国を支え続けた男の誇りがそれを許さなかった。 彼に出来たのはただいつもの様に告げることだけだった。 「だが、後悔はさせんつもりだ」 「それで充分ですわ」 ルイズはそっと目を伏せた。 ああ、ここにも貴族が一人居た。 自らを悪に任じても、それでも誰かの為に力を尽くす者が居た。 ならば自分はそれでいい。 それだけで、自分は死地へと行けるだろう。 だが、仲間たちまでそれにつき合わせることもあるまい。 「もう一つだけ約束していただけますか、マザリーニ枢機卿。 もしもタバサとキュルケとギーシュとわたしが死ぬことも許されず捕虜になった場合ですが」 みなまで聞かずに、いいだろうとマザリーニは言った。 捕虜の引渡しとなればどのような要求がくるか解ったものではない。 だがそれがなんだと彼は思った。 目の前の小さな貴族のためならどんなことでもしてやるつもりだった。 「順番は言った通りでいいのかね?」 「はい。タバサはトリステイン人でもゲルマニア人でもありませんし。 キュルケはトリステイン人ではありません。 ギーシュはトリステイン人ですがわたしに巻き込まれたようなものですから」 その言葉に、マザリーニは微かに胸を押さえた。 ガリアとの関係を考慮すればタバサを一番にしているのは好ましいと、 少しでも思った自分が許せなかった。 「いいだろう。必ず助けてやる。 ミス・ヴァリエール。君と、君の仲間たちが生き残ったならば、 どんな手を使ってでも助け出してやる。 これは約束だ。始祖ブリミルに誓って果たされるべき約束だ」 ルイズは嬉しそうに頭を下げた。 彼女は今までマザリーニのことをよくは知らなかった。 平民の血も混じっていると言う噂のある彼の風評はお世辞にもいいものとは言えず、 マリアンヌ大后の後ろ盾を良いことに国政を操る奸雄だというモノが殆どだった。 だが、そんな噂など全て嘘だった。 ルイズはずっとずっと昔にあの人から聞いた言葉を思い出した。 世界は嘘に満ちている。最後に残るものこそが真実だ。 「マザリーニ枢機卿。魔法が使えないわたしは貴族として半人前ですが」 そして、ルイズは華やかに顔をほころばせて笑った。 「あなたは、本当に貴族らしいと思いますわ」 面と向かって言われたマザリーニは我知らず赤面する自分を自覚した。 今まで、そんなことを言われたことなど一度として無かったのだから。 退去する旨を伝えて席を立ち、扉の前で足元に視線を移す。 門番のようにそこに座っている大猫を見やると口を開いた。 「ミス・ヴァリエール。確か、あなたの姉のカトレア殿は動物がお好きだと聞いていたが」 「ええ、その通りですわ」 「この大猫、あなたの使い魔をお見せすれば、カトレア殿はたいそうお喜びになると思うのだが、どうだろう」 最後にそう言い残し、未だ耳の赤みが抜けぬ枢機卿は部屋を辞した。 それを見送ったルイズはブータと顔を見合わせて苦笑する。 「なんとも不器用な男だな」 髯を震わせて大猫が言った。 最後の言葉に隠されたマザリーニの真意を読み取れぬほど彼らは鈍感ではなかった。 すなわち――――“必ず生きて帰れ” 前に戻る 次に進む 目次
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「サイト! 助けて!」 ルイズは絶叫した。 呪文が完成し、ワルドがルイズに向かって杖を振り下ろそうとした瞬間……。 礼拝堂の壁が轟音と共に崩れ、外から烈風が飛び込んできた。 「貴様……」 ワルドが呟く。 壁をぶち破り、間一髪飛び込んできた才人らしき人物が、ワルドの杖をはっしとデルフリンガーでうけとめていた。 そしてルイズを横抱きに抱えて、ワルドから距離をとる。 なぜ「らしき人物」かというと、飛び込んできた人物は覆面のようなもので顔の下半分を覆っていたからだ。 「大丈夫かっ!?」 「サ……サイト……助けに来てくれたんだ……」 「ルイズの使い魔め! 邪魔だてするか! この変態めが!」 ワルドは絶叫する。 まあ、無理もあるまい。 そのサイトらしき人物は上半身はランニングシャツ、下半身はトランクス一丁という、有り体に言って下着姿だったのだから。 「ちっ…違う! そ、それがしは才人でも才人に憑いている物でもないっ!! 全くの別人だッ!!」 「どっから見てもサイトそのものじゃないのよっ!!」 「いやっ違うっ!! とてもよく似ているが違うのだあっ!!」 才人(仮)は冷や汗を流しながら叫ぶ。 「それがしは……それがしは……ルイズの使い魔そっくりの人間が大勢住むツカイマ星からやってきた宇宙人、 ツカイマンだああっ!!」 無論神族の一員である韋駄天ツカイマンにワルドごときが敵う筈もなく、ワルドは捕らえられた。 クロムウェルもシェフィールドもフーケも捕まった。 彼らの証言でガリアの「無能王」ジョゼフが裏で糸を引いていることがわかり、アルビオン王党派・トリスティン・ゲルマニアの連合軍がガリアに攻め入り、ジョゼフを討とうとしたが、ジョゼフは「逃げるんだよォォォォォォ!」と叫びつつ走り去っていった。 そしてジョゼフの行方は杳としてわからないという。 いろいろあったけど、ハルケギニアはおおむね平和だった。 完。 -「GS美神極楽大作戦!」から韋駄天八兵衛を召喚
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作品名:剣の女王と烙印の仔 使用者:アナスタシア・ゴルゾヴァ・アンゴルナ 剣の女王と烙印の仔に登場する能力。 刻印の一つ。 生命を流転する能力。 能力についての詳細生命流転 使用者との関連性暴走 元ネタ? 関連項目 関連タグ リンク 能力についての詳細 生命流転 生と死の流れを高速て早める生まれてないものが生まれ、生きている者は老死し、死んだ者は生まれ直す。 娘の肌が乾いて皺だらけになり、肉がみるみるうちに萎えて腕も脚も胴体も萎み、髪の 毛が残らず抜け落ち、石床に崩れ落ちた。虚しく空を掻く老いさらばえたその手をニコロ はつかもうとするが、娘の乾ききった肉体は指先から砕け、砂となってニコロの足下に厚 く積もる。 (中略) そう、戦死でも病死でもない。みな老死したのだ。その傍らで草花は芽吹き、虫たちは 卵から孵り、さなぎを経ることさえなく羽化していく。 使用者との関連性 暴走 無差別に流転する領域を作り出すポイボスにより強化されたため力が制御できず流出した。 女帝の周囲での不可解な死滅現象は、数日前から始まっていた。まず、美しい少年ばか りをそろえた側近がみなやられた。女帝の天幕の中で、しわくちゃに干からびた死体とな って見つかったのだ。続いて、女帝の身の回りのものを積んだ台車を牽いていた馬たちと その御者が死んだ。虫の大量発生と、女帝の宿営地が一夜にして草むらに覆われる現象が 始まったのもその頃だ。 元ネタ? ユーノー(ラテン:Juno) ローマ神話に登場する女神。 ギリシャ神話のヘーラーに相当する神話最高の女神。結婚と出産を司る。 ユーノー・モネータ(ラテン:Juno Moneta) ユーノーの添名の一つ。モネータとは「忠告する」の意。 紀元前390年のガリア人によるローマ侵攻の際、カピトリウムの丘のユーノー神殿のガチョウがガリア人の侵攻を伝えたことからこの名がついた。 関連項目 刻印 イノ・モルタの能力分類。 関連タグ 剣の女王と烙印の仔 固有時間加速 能力 リンク
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登録日:2012/02/02(木) 00 45 43 更新日:2020/12/09 Wed 13 56 46 所要時間:約 5 分で読めます ▽タグ一覧 キミとつながる空 キミ空 ストライクウィッチーズ ワールドウィッチーズ 京極しん 娘TYPE 漫画 みんな みんな 繋がっているんだよ 同じ願いで 同じ想いで 何かを守りたいって気持ちで 繋がっているんだよ この空の下で 娘TYPEで連載されていたストライクウィッチーズのコミカライズ作品。作者は京極しん。単行本全一巻。通称「キミ空」。 TVアニメ一期と二期の間のエピソードを、501の各キャラクターにスポットを当てつつ描かれた短編集の構成を取っている。 アニメ本編には登場しない、設定のみのウィッチが何人か登場しているのが特徴。 同人誌や限定版ブックレット、ドラマCD等、設定を補完できる関連商品が概ね入手の敷居が高めとなっている中、現在も比較的容易に店頭で入手可能な作品であり、 ワールドウィッチーズ入門書として作品世界の広がりに触れるのに適した一冊でもある。 ○各話あらすじ&登場キャラクター 《ガリアの復興》 第501統合戦闘航空団「ストライクウィッチーズ」の活躍により、ネウロイ占領下から解放されたガリア。 501の解散後、ペリーヌは軍の一線を退き、荒廃した祖国の復興のために尽力していた。 しかし一向に進捗の見えない現実に、リーネに支えられながらも焦りは募っていくばかり。 そんな最中、彼女らの元を訪れた意外な客人とは…。 ◆ペリーヌ・クロステルマン ◆リネット・ビショップ ◆ウィルマ・ビショップ 元ファラウェイランド空軍所属のウィッチにして、リーネの姉。既に退役した身の上だが、妹の頑張りを聞きつけ、あるサプライズを引き連れてガリアへとやってきた。 ◆アメリー・プランシャール 自由ガリア空軍所属のウィッチ。かつてペリーヌの僚機を務めていた、ペリーヌ大好きっ娘。ウィルマとは元同僚。 《アフリカの地で》 501解散後、「アフリカヘ行け」という大雑把極まりない辞令を受けたシャーリーとなし崩し的に同行するルッキーニは、 広大なアフリカの大地を気ままに転々とする日々を送っていた。 ある日、飛来したネウロイを発見した二人は、迎撃のため周辺部隊に救援を要請する。応えた部隊は…。 ◆シャーロット・E・イェーガー(シャーリー) ◆フランチェスカ・ルッキーニ ◆ハンナ・ユスティーナ・マルセイユ 「アフリカの星」と呼ばれるカールスラントの超エース。超然としているようで、割と大人げない。 ◆加東圭子 統合戦闘飛行隊アフリカこと「ストームウィッチーズ」隊長。ウィッチとしてあがりを迎えた身で部隊をとりまとめる偉い人。タレ気味とかいってはいけない。 ◆稲垣真美 「ストームウィッチーズ」の隊員。圭子に憧れている。結構な力持ち。でも残念賞。 《スオムスから聴こえる歌声》 戦況が好転を見せていたスオムス。 エイラはこれ幸いとサーニャを伴い、隣国オラーシャと連絡を付ける名目でサーニャの「両親探し」に奔走していた。 ある日、突然二人の前に落ちてきたのは、エイラにとってずいぶん見慣れたモノで…。 ◆エイラ・イルマタル・ユーティライネン ◆サーニャ・V・リトヴャク ◆ニッカ・エドワーディン・カタヤイネン スオムス空軍時代のエイラの同僚にして友人で、愛称は「ニパ」。502統合戦闘航空団のメンバー。 「ついてないカタヤイネン」の異名が示す通りの不幸体質で、しょっちゅうストライカーの不調に見舞われている。 素直な性格だが、ちょっと空気読めないのが玉にキズ。 《カールスラントの幽霊》 未だネウロイ占領下にあるカールスラント。501解散後も祖国を同じくする三人は、最前線で戦いを続けていた。 そんな中、基地に「幽霊ウィッチ」なる噂が流れる。本来なら他愛のない噂話だが、そこに「人型ネウロイ」との関連を懸念した上層部はミーナ達に調査を指示する。 目的地は隣国ベルギカ領、サン・トロン! ◆エーリカ・ハルトマン ◆ゲルトルート・バルクホルン ◆ミーナ・ディートリンデ・ヴィルケ ◆ヘルマ・レンナルツ カールスラント空軍にてジェットストライカーのテスト部隊に所属する、次世代のエースと目される堅物ちびっ子曹長。補充員として調査に同行する。 憧れの人はバルクホルン。 ◆ハイデマリー・W・シュナウファー カールスラント最強のナイトウィッチ。極度の口下手。今回の幽霊騒ぎの元凶 《扶桑で醒める光》 扶桑皇国にて訓練教官の任に就いていた坂本は、自身に迫る魔力減衰への対抗策を求め、 旧知であり、ウィッチとしてあがりを迎えてなおテストパイロットとして活躍する黒江綾香の元を訪ねる。 剣による対話の末、坂本が見出した答えとは…。 ◆坂本美緒 ◆黒江綾香 扶桑陸軍にて「魔のクロエ」の異名で呼ばれた元エース。 剣技にかけては歴代でも五指に入ると言われ、最前線での戦いからは身を退きながらもテストパイロットとして活躍している。 今回、実に数年ぶりに坂本の来訪を受けるのだが…。 《この空の下で》 いつかまた 同じ空に集う日まで その日は きっと遠くない ◆宮藤芳佳 ◆ 第501統合戦闘航空団「ストライクウィッチーズ」 追記・修正は「自分の守りたいもの」を見据えてからお願いします。 △メニュー 項目変更 この項目が面白かったなら……\ポチッと/ -アニヲタWiki- ▷ コメント欄 [部分編集] 「同人出してた作家を脅はk…囲い込みして召し上げ商業化、内容極薄で絵だけのメディア展開を多数やって角川ぼろ儲け」というひどい戦法のはしりがスト魔女だとこの作品あたり。確かにかわいいけど内容はすごく少ないよ。 -- 名無しさん (2014-05-13 12 05 13) だいたい角川のせい -- 名無しさん (2014-10-09 21 49 28) 名前 コメント
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2-1 設定国民の名前まとめ(全国版)[羅幻藩国] 設定国民の名前 よみ 備考 モモ=フェニア カシワ=セキュラ セセリ=ガリア ササミ=オルガナ テバ=コーラー ヘルツ=フォチュナ ズリ=フェット スナ=タイフォ キンカン=ラーズ ツクネ=トレバー ネギマ=キューン マツバ=オリン ヤゲン=ターキン トサ=ビンクス サガリ=シボース ハラミ=カルリシアン シラ=ウィンドゥ フエ=モスマ イカダ=ガンレイ ウズラ=ディアス 計20名 報酬入金先 羅幻藩国口座 20名分
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前ページ次ページジ・エルダースクロール外伝 ハルケギニア 23,烈風 ワルドがのんきに笑っている間、カリーヌ・デジレと現マンティコア隊の訓練は熾烈さを増していた。 一人、また一人と風にあおられ、マンティコアと共に空高く吹き飛ばされる。 「どうしたというのか!それで終わりか?」 烈風の風は止む気配が全くない。先ほど吹き飛ばされた現隊長、 ド・ゼッサールが勇敢にも突撃した。瞬間、彼は風に舞う。 今回の終了条件は、カリーヌに一撃でも攻撃を浴びせること。 「遅い!」 また200メイル上空まで吹き飛ばされる。ちゃんと死なないように、 カリーヌは地面に当たる瞬間、彼を魔法で少し浮かせてから落とす。 「…きょ、教官殿。も、もう動けません」 マンティコアと共に倒れている誰かが悲痛そうに訴えた。まだ新人の様である。 「甘えるな!王家に危機が迫っていても、その様な事を言えると思っているのか!!」 泣く子も黙る王宮衛士隊。グリフォン隊の様な華やかさは無いが、 マンティコア隊は規律だった連携による多重攻撃が売りである。 全て見切られ、全員がマンティコアごと吹き飛ばされるなんて。 烈風の伝説は本当だったのか。新人はそう思い、 また風に吹き飛ばされて気絶した。 伝説。それは語られていく内に微妙に変わっていき、 尾ひれ背びれが付いて、最終的にまるで違う話になるのが常である。 もちろん、彼女は王宮勤めであるから公式な記録が残ってはいる。 たった一人で火竜山脈のドラゴンを鎮圧したとか、 エスターシュの反乱を正規軍が来る前に鎮圧したとかがそれだ。 しかし、それらは一般平民からしてみたら酒の肴に話す、 ちょっとした笑い話である。 いくら貴族といえども流石にそれは誇大過ぎる。 宣伝の為に王家が作ったお話だろう。というのが彼らの言い分だ。 実際には尾ひれどころか、皮がはがれ身が落ち、 骨だけでスイスイ泳ぐ伝説であるとも知らず。 実は武芸にも秀でていて、1個中隊から魔法を使うという話があるが、 非メイジの2個中隊までなら魔法を使わなくてもどうにかなるらしい。 弓矢や鉄砲、そして大砲の弾を剣で弾いたり切ったりしながら、 突撃して兵士をなぎ倒していく様を、武器屋の親父は見たそうだ。 何故彼が引き分けに持っていけたか? 埋もれてしまった伝説は、いつか明らかになるだろう。 火竜鎮圧の際、たった一人で向かったと言うが、 珍味である極楽鳥の卵を一度食べてみたかったから、 休暇の折りに行ってみただけである。 勿論、鎧なんて装備しないラフなスタイルで。 季節がたまたま火竜の繁殖期であった為、 そこら辺の火竜が暴れて死なないように、 ドットスペルで気絶させながら極楽鳥の巣まで行った。 途中、季節の関係上ガイドを雇えなかった為に迷ってしまったが、 なんとか卵を取って宿泊している町に帰ってみると、 何故か付近の町や村の人々に感謝された。 王宮に戻ってみれば、王直々に竜殺しの二つ名に改名させられそうになった。 しかし彼女は今の二つ名が気に入っていたので、 「いえ、今の烈風で十二分にございます」 と訳の分からぬまま前王にキッパリと言い、 それでこそ貴族の鑑よ!と言わしめさせたのだ。 ちなみに、時期が悪かったのか卵はあまり美味しくなかったそうな。 王宮は、ガリアに恩を売ったことにする為、 この件を火竜鎮圧の任により、火竜山脈に向かわせた事にしたのだ。 ガリアからしてみれば、示威行為である為どうにかしたかったものの、 火竜達が人里に寄りつかなくなった事と、 たった一人で火竜山脈を制覇した烈風に恐れを抱き、 ただ感謝する他なかったという。 トリステイン王は、その気になればハルケギニア全土を手にする事も出来ただろうが、 持ちすぎる事による弊害を良く理解していた。 それ故、彼女を使って上手い具合に外交を進めて、 トリステインを今の地位に置いたのである。 ただ一言「最近、『烈風』がな…」と言えば、大抵他国は条件をのむものだった。 娘はアルビオンの皇太子とでも結婚させるつもりだったのだ。 結ばれるだろう二国間の同盟を、破砕出来るほど強大な戦力を投入する戦争は滅多にない。 聖戦でもあれば別だが、いくらロマリアでも王家にそんな事はしないだろう。 そう考えて、あまりアンリエッタには政治について学ばせなかった。 ガリアによると、烈風一人を沈黙させる為に、 10年分の国家予算を軍事費にする必要がある。 という結果が出たこともあるらしい。嘘か誠かは分からないが、 それほどのメイジであることだけは間違いない話である。 カリーヌ本人からしてみれば王家に忠誠を誓っているのだから、 それらを誇らしげに思っていた。彼女は戦えなくなるまでマンティコア隊にいようと思い、 尚更日々鍛錬に励んだという。 そんな彼女が何故結婚したのか?現ヴァリエール公爵の、 熱烈すぎるアプローチに仕方なく折れたからだ。 立とうとする者が、いや、息をするので精一杯なマンティコア隊を見て、 カリーヌは訓練の終わりを言い渡した。父上の訓練はもっと凄かったけれど、 死なれると困りますからね。そんな事を思いながら、 自分の使い魔と共に訓練場を去ろうとした時だった。 誰かの悲鳴がかすかに聞こえた。マンティコアと共にそこへ急ぎ駆けつける。 衛士隊の宿舎、グリフォン隊の隊長室の窓下。 グリフォンに乗ったワルドが、気絶したアンリエッタ姫殿下を連れて、 どこかに飛び去ろうとしていた。 何故だ。ワルドは自身の計画を確認して実行に移した。 瞬間的な当て身による気絶。姫殿下は女官の死体に気付く前に倒れた。 か細く悲鳴をもらされたが、こんな声を聞かれるはずがない。 退散するか。と杖を手放したアンリエッタを抱えて、 外に待たせてあるグリフォンに乗って飛ぼうとした時、 「何をしているか!ジャン・ジャック・フランシス・ド・ワルド!!」 振り向けば烈風がいた。怒りに燃える彼女と、 共に修羅場をくぐり抜けたのだろう、使い魔のマンティコアが吠える。 グリフォンは恐れおののいた。ワルドはどうにか耐えようともがいた。 「は、ハハハ…」 そういえば、最近マンティコア隊の訓練の後が凄まじい事になっていたな。 この人ならそれくらいするだろうな。ああ、始祖は私に死ねというのか。 伝説を前にどう立ち向かうか。今、ワルドは崖っぷちにいた。 「これがリコールか。いや、初めて見たよ」 タムリエル中央、シロディールより外に出た事が無かったマーティンは、 東部地域のモロウウインドで、実際に行われているという転移魔法を初めて体験した。 転移とはどのような物かをある程度理解できたが、 しかしそう簡単に使える様になったりはしない。 ちゃんと魔法構成を教えてもらわなければ習得なんて出来ないし、 転移の魔法はとても複雑で、『神秘』系統の熟練者でなければ使えないのだ。 この系統はかなり謎が多い。これに属する魔法は、 訳が分からないからこれにしておこう。といった風に置かれた物もある系統で、 未だに魔法の結果が何故そうなるのか、あまり分かっていないのだ。 そして根気強く新魔法の実験をしても、瞬間的に結果内容が変わる事すらある。 最近、いくつかの魔法が別系統へと移行した事からもその複雑さが分かるだろう。 そんな理由で、神秘はほとんどのメイジが研究を嫌がる魔術系統であり、 現在の政策と文化的な理由から魔法への理解が浅いシロディール地方では、 それらについての専門的な学習が出来ない。 その為、モロウウインドではアイテムに付呪されるくらいよく使われる、 マークとリコール(Mark and Recall)の使用が一般には未だ禁止となっている。 機密と治安はもちろんのこと、市民が納得する安全性の実証が無い限り、 帝国議会はシロディールでの使用を認めるつもりはない、と表向きには表明している。 別の場所に姿を現したときに、果たしてちゃんとした状態で現れるのか。 それが帝国議会と魔術師ギルドの論争の焦点となっている 確たる証拠の提示を求める帝国議会側と、統計的にモロウウインドで保証を得ているから大丈夫。 とする魔術師ギルド側。帝国は最初から採用する気が無いため、まだまだこの論争は続くだろう。 『神秘論』という本に神秘系統について詳しく書いてあったけれど、 さて、どんな内容だったかな。メイジとして、 良く使われる神秘系統の魔法以外はほとんど覚えていないし、 それの研究なんてマーティンは一切やった事がなかった。 「ええ。私が使える訳ではありませんが、ノクターナルの付呪の効果を発動させるくらいなら、問題なく扱えます」 フォックスは跪いて答え、それにならい他の乗組員達も跪く。 タムリエルに住み、一般的な読み書きを行える知能を持つ種族なら、 誰でもスクロール(巻物)に書かれた魔法や、アイテムに付呪された魔法を使うことが出来る。 それを使える程の魔法力が無くても、品物に込められた魔法力が肩代わりしてくれるのだ。 「い、いや、まぁとりあえず立ってくれるかい?」 やはり慣れない。皇帝としてより、一般市民として過ごした時間の方が、 遙かに長いマーティンは跪かれたりした事などほとんどないのだ。 緊急事態だったあの時はともかくとして、 今みたいな時にやられるとどうにもむず痒くて仕方がない。 「ははっ!」 曇王の神殿を思い出す。ブレイズとの温度差の違いで苦労したな。 やっぱり私なんかが皇帝になってはだめだ。と思いながら背筋をピンと張って立つ、 グレイ・フォックスとその一同を見た。何故かルイズまでしている。 後の方に彼女たちが見えた。無事で良かったと思いながらマーティンは言った。 「ルイズ。君までしなくていいから。というより皆さん。普通に立ってくださって構いませんから」 空気的にやるべきかと思って。と真顔でルイズは言った。 他の連中もいつものだらけた雰囲気に戻る。 グレイ・フォックスが号令を発して、彼らは荷物を運び始めた。 彼が一礼をして去った後、マーティンの後から声が聞こえた。 『有名人はつらいな。竜の子よ』 いつの間にか起きたらしいノクターナルが言った。 どうにも、マーティンはデイドラ達の間でも名が知れているらしい。 デイドラ王子の一神、メエルーンズ・デイゴンを撃退したのだから当たり前だろうか。 「ええ、全くです…ところで、その、プリンス・ノクターナル?」 あなたがここにいると言うことは、ここはあなたの領域ですか? そうマーティンは聞いてみる。ノクターナルは首を横に振った。 『否。ここはエセリウスとオブリビオンの狭間。いつ出来たのか、どこの誰が創ったのか我は知らぬ』 「そのような世界があるのですか?」 『我が知る限りではこの地のみ。されど、殆どのデイドラは自身の力ではこの地に来ることすら叶わぬ』 竜神アカトシュがタムリエルに施した物よりは弱いが、 それに似た制約がここにもあるらしい。 『故に、ここで己の力によって来ることが出来るデイドラは、 シシスが生み出した純正な存在のみ。 その上で、この地での信仰か、何らかの影響を持っておらねば入る事が許されぬ。 この地の誰かに呼び出されるのであれば別であろうがな。 我は頭巾を奪いし者が信仰を集める事によって、この地にいる事を許されている。 入ってしまえばある程度好きに出来る。まこと不可思議な制約よ』 どこかで灰色頭巾の男がため息をついた。テファに服を渡さなければ良かったと何度後悔したのだろうか。 『されどこの地は面妖なり。この地の定命の者達を殺せば、 「マラキャス」が造ったメイスの如く、我らは力を無くし、 オブリビオンの最下層にまで送られてしまうのだ。 それ故、ここにデイドラの主が現れる事は滅多に無い』 「あの時、思いっきり殺ろうとしていなかったかい?」 影の中に、イザベラを入れようとしたのをフーケは思い出して言った。 『我が領域に飲み込んでからな。それならばおそらく問題は無かろう。 不可思議なのはこの地の制約。我こそが法である我が領域内ならばあの程度、どうという事はない』 「んじゃ、何であんな事言ったのさ」 『決まっているであろう。格好良いからだ』 やっぱりこいつぶん殴りたい。そう思いながら頭を抱えるフーケを余所に、 そろりと、ルイズはノクターナルに向かって手を上げた。 『何用か?竜の子を使役する者よ』 「えーと…色々教えて欲しいのですけれど…その、ノクターナル様?」 全くルイズはついて行けない。プリンス、女じゃない。 ていうより誰よシシスって。マラキャスって何。それのメイス? 純正って事はそれ以外もいるのかしら?ていうより、狭間ってなに。 それじゃ私たちってなによ一体。いえ、それよりこんなのが本当に王族なのかしら? 置いてけぼりをされている彼女からすれば、至極当然な考えであった。 「まず、何故王子なのでしょうか」 『我らの性など、定命の者達からすれば特に意味はないのであろう。 常闇の父より生まれし我らは、皆かの方の子。 故にシシスを王として考え、我らを王子とする定命の者の呼び名よ。 実のところは、王子と呼ぶべきでない者も、 同じように扱われているのだ。嘆かわしいことにな』 それがさっき言ってた純正とは違う存在なのかしら。ルイズは質問を続けた。 「ええと、そのシシスとは一体?」 『我や多くのデイドラを創りし存在。常闇の父とも言われるお方。アヌイ=エルの対となりし混沌その物。 定命の者には、蛇の形をして無秩序を示す何かとしても知られているな』 シシスってデイドラ…なの?ていうより何なのアヌイ=エルって。 ルイズは、聞けば聞くほど墓穴を掘っているような気分になった。 「アヌイ=エルとは、アヌの事でしょうか?プリンス・ノクターナル」 マーティンからしても、色々と発見があるらしかった。 そういえば、デイドラの王と話す機会なんて滅多にないとか言ってたわね。 ルイズはそう思いながら、ノクターナルの口が開くのを待った。 『お前達やいくらかのデイドラはそう呼ぶ。だが、我はアヌイ=エルと呼んでいる』 マーティン曰く、アヌは最初に存在した二神の内の一神らしい。 詳しくは後で話すと言った。 「そしてパドメイはシシス、か…」 いや、何なのパドメイって。ルイズは少々怒りながらマーティンに言った。 さっきから話がごちゃごちゃし過ぎているのだ。少しずつ解説して欲しいものである。 「私たちからしてみれば世界が生まれる前に、アヌと争ったと言われる存在さ。 デイドラの生みの親だけど、デイドラではないと言われている存在なんだ。後で昔から伝わる伝記を教えるよ。 それが正しい物ではないのだけれど、知っておかないと何がなんだか分からないんだ」 彼はルイズに自国の神話を教えてはいない。そもそも賢い彼女に教えたらどうなるか。 神話だからつじつまが合わないのだが、それをそういうものだと理解してくれるか疑問だった。 こっちの創造神話は知らないが、タムリエルのそれは色々と解釈し難い部分が多い。 マーティンは神学者ではない。一介のメイジから、色々あって街の司祭になった人物である。 その為、神々については一般人よりも詳しいが、神々の生まれはそこまで詳しくはない。 メイジだった若い頃はそんなことより力を求めていたし、 それを恥じて九大神教団に入信した後は、一般的に知られる神話を近所の子供達に教えたり、 教会にやって来る人々に説法を説いたりして過ごしていた。 神の力を恐れ、踏み込んで学ぶ事をやめたのである。 そんな訳で自分がいたシロディールの事や、友と行った数々の洞穴や遺跡についての事、 それとこっちの魔法について食事時や寝る前等に彼女と話して過ごしていた。 「ほんっとうにややこしいのね」 頭を抱えてルイズは言った。ハルケギニアの神話に慣れ親しんできた彼女は、 全く違う世界の全く違う神話について言われても、頭の中での整理がつかない。 むしろ今まで聞いてきた物と混じって余計に頭がこんがらがってしまう。 そもそも、神話が全て真実だとは思っていない。ルイズは別段何も無ければ頭の良い子である。 神の存在に関する疑問は当然持っていた。魔法の恩恵が無いのだから尚更である。 だが、ここに生き証人らしき存在がいる。少なくともマーティンはそれだと言っている。 ならばさっきからの話は真実なわけで。神話なのに全部本当って…と頭を抱え込みねじらせながらルイズは考え込む。 「ああ、神話だからね。本当かどうかすら分からないよ。 デイドラやエイドラがいる以上、それに似た事があったのは間違い無いのだけれどね」 マーティンはそう言ってデイドラについて、 解釈の仕方で分かりやすくするために嘘を言ってすまなかった。 と悩むルイズに謝った。 後で話すのは『子供向けアヌの伝記』 神々の関係性を考える時に、最も分かりやすい物語である。 その内容が、本当かどうかを別にして考える必要性を除けばだが。 古い伝説を語る定命の種族はいない。もう昔過ぎて、皆死んでしまったからだ。 タムリエルに点在する、墓場の幽霊達に聞くのも悪い選択では無いが、 先史以前の神話期等の話は期待できないだろう。 そんなに長く留まっているのは稀で、特に世界が生まれる以前の話というのは、 定命の存在自体がいなかったのだ。 語ってくれるだろうエイドラにせよデイドラにせよ、 その内容は主観が多分に入る上に、アカトシュの造った障壁によって、 どちらとも生半可な技術では呼び出すことが出来ない。 帝国はエイドラである九大神を国教としているが、 デイドラを信仰している帝国領の国も多数ある。 どちらが真実かは、確かめようがないのだ。 ハルケギニアが生まれるよりも昔の事だから、 語る事が出来る存在達も多くを忘れているだろう。 出番が欲しそうにカタカタと鳴っている剣の様に。 グレイ・フォックスの号令の下、盗賊達は順調に荷物を運んでいる。 頭の中で今の話を整理しようとするルイズだったが、 どうにも上手くいかない。当たり前な話だが、 上手く整理させる材料が少なすぎるのだ。マーティンはノクターナルと話を続けている。 帰る事が出来るかどうかについて聞いているらしい。 邪魔するのも悪いわよね。そう彼女は考えて、 後でマーティンから伝記とやらを教えてもらってからと思い直し、 タルブの村を見回してみる。見知った二人が船の近くで寝そべっている風竜に乗っていた。 そういえば、さっきもこの竜が物を運んでいたわね。 そんな事を思いながら難しい話はひとまず置いて、船を降り竜の方に向かう。 疲れて眠っているらしい竜の上から声が聞こえた。 「あら、生きてたの?」 そう言ってキュルケは笑う。タバサはルイズからしてみればいつも通りの表情に見える。 何も言わず、彼女はキュルケに抱きしめられていた。ルイズは竜を上ってキュルケへ近づき、 ふん、と意地悪そうに笑った。 「おあいにく様。そう簡単にヴァリエールの女は死なないのよ」 「へぇ。悪運強いのね」 優しい笑みを浮かべられながら、ルイズは頭を撫でられた。悪い気はしない。 「これから依頼成功の宴をするんですって。アルビオンの王子様とかもいるから、あんたも参加しなさいな」 「へ?今、何て」 少し間を空けてルイズは聞き返す。口をあんぐり開け、いかにも驚いているといった表情で。 「知らないの?この人達が来た理由って、それらしいわよ。お姫様に頼まれたんですって」 姫さま…と、ルイズは思った。私には何も言いませんでしたよね。 アンリエッタの事を思い、信用されていなかったのねと悲しくなるルイズであった。 「ノクターナル様。お話が」 『何用か?我の頭巾を奪いし者よ』 一通り運び終えたグレイ・フォックスは、ノクターナルに話しかけた。 話の終わったマーティンはルイズの方へと歩いて行った。 おそらく、ルイズに伝記を教えにいくのだろう。 「最後の一つを忘れておられます」 『本当に、返すのだろうな?』 彼女が返して欲しがっているのは灰色頭巾。 シエスタの祈りよりも、打算的にノクターナルは動いていたのだ。 神様といっても祈れば動く訳ではない。デイドラ王子というのは、 それ相応の報酬か、必要に迫られたしたくもない雑務か、 楽しい暇つぶしにならないと動きはしないのだ。 「ええ、必ず返しますとも」 グレイ・フォックスは笑って言った。手にはいつから持っていたのだろうか。 変わったピックを携えている。ノクターナルはローブのポケットを漁り始めた。 『いつとった』 「さて、何の事でしょうか?」 『話が違うぞ!我を謀るというのなら…』 いくらお前と言えども、と言おうとして邪魔が入った。 いつのまにかそこにいた、麗しき影の君である。 「落ち着いて下さい。ノクターナル様」 営業用の黒いローブとフードに身を包んだ彼女は、穏やかにそう言った。 運ばれてきた王家の二人を見て、ただならぬ雰囲気を感じ取り、 急ぎ彼女は船へと行ったのだ。ちなみに、誰にもバレてはいない。 美麗ながら気配を消す才能がある。夜の女王に影認定を受けるのは、 伊達ではないといったところか。 『我が影よ!この者は契約を違えたのだぞ?他のデイドラにそれをすれば魂を抜き取られても文句は言えぬ』 荒々しいままに言うノクターナルを、ティファニアは優しく受け流す。 この姿で行う王都での様々な活動は、彼女を熟達の弁舌家に仕立て上げた。 いつもの姿ではほぼ発揮できないのが残念な点である。 「麗しき我らが守護者である夜の女王ノクターナル様。あなたはとても優しく慈愛に満ちていらっしゃいます」 ぐ、とノクターナルは黒一色のテファを見た。案外、ほめられるのに弱いらしい。 「ですから、定命の存在のちょっとした『悪戯』を笑ってお許しになられます」 『し、しかしだな我が影よ。これには領域を持つデイドラの面子というものが…』 ノクターナルは後の方を口ごもりながら言った。テファが優勢の様だ。 グレイ・フォックスはそこに割って入った。 「偉大なるデイドラ王子ノクターナル。確かに私は返すと言いましたが、 何を返すかまでは言っておりませぬ。ですから、この『不壊のピック』(Skeleton key) をあなた様に返したとしても、契約の不履行とはなりませぬが…」 そこまで聞いて、ようやくノクターナルははめられた事に気が付いた。 『…やはりお前は口が上手いな。我の頭巾を奪いし者よ』 「お褒めいただきまことにありがたく思います」 「さぁ、ノクターナル様。最後の一仕事が終われば宴ですから頑張って下さい!」 ため息をついて、ノクターナルは影に消えた。それを見て、ふぅ。とティファニアは息を吐いた。 そして冷たい目で灰色頭巾の男を見る。怒りの視線をフォックスに投げかけつつ口を開いた。 「あの方を騙すのはあまり良い事とは思えません。コルヴァスさん」 「とはいえ、お姫様の要求がそれだからな。仕方ないだろう?テファ」 連れて来たら出来る限り早く会わせて下さい。そうアンリエッタは涙ながらに叫んだ。 その気迫は間違いなく王家のそれであった。もっと違う所で発揮してくれれば言う事はないのだが。 「それでも、私たちを守ってくださる方を騙すのは良くない事です」 「ああ、そうだな。だが、この頭巾を取って俺が誰かを分かるのは君だけだ。そうだろ?」 おそらくはルーンの効果なのだろう。彼女だけは彼を「コルヴァス・アンブラノクス」として、 常に認識できる。 「なくなればどうなるか。分かるか?妻や友人、その他多くの顔なじみに声をかけて無視される気持ち」 「それはそうですけど、ちゃんと頼んで誰も傷つかずに済む方法もあったはずです」 テファの強い口調に、コルヴァスは押され気味に言った。 「まぁ、それはそうなんだが。アレを動かすとなるとな…」 それを聞いてティファニアがかっと口を開く。元々正義感が強い方なのか、 ローブを纏った彼女は義賊的な美徳は許しても、不義を許す気は一切無い。 「アレって何ですかアレって。崇拝すべきお方だって言ったのはあなたですよ? だいたいコルヴァスさん。スキルニルは別にしても最近お金の使い方が荒っぽいです。 皆に配る分まで使ったりしていませんよね?それに…」 お説教とも言えるテファのお話は、彼女に気付いた盗賊達が、 自分たちの戦果を報告に来てからようやく終わった。 間違いなくそこに佇む灰色の変な頭巾をかぶった親父より慕われている。 やっぱり、盗賊ギルドの長は彼女なのかもしれない。 俺、何で怒られたんだろう。ちゃんと運んで来たってのに。 若かりし頃の妻を思い出す。手癖が悪いことをよく諫められたな。 はぁ、とため息を付く。今日はヤケだ。飲むぞ。たくさん飲むぞ。 影の君の後をトボトボ歩くグレイ・フォックスの背中は、 一仕事を終えたにしては哀愁が漂いすぎていた。 その頃、アンリエッタ。 「は、離しなさい!もう足掻いてもどうにもならない事は分かっているのでしょう!?」 気絶から覚め、彼女はグリフォンから逃げようと必死である。 ワルドは、落ちた時を考えて高度を上げる事も出来ず、微速前進で進むしかなかった。 「嫌だ!今離したら僕が終わる!終わってしまう!!」 ワルドはワルドで、そんな姫殿下を降ろすまいと必死である。 至近距離からの烈風とその使い魔の咆哮があるのだ。 必死にならない人間はいない。 変則的な動きでグリフォンを翻弄するマンティコアが一体。 それに乗る人も一人。魔法はまだ使われない。 強力過ぎる為に、どう狙っても姫殿下を巻き込んでしまうからだ。 「今ならまだ間にあう!早々に姫殿下を離し、投降せよ!!」 嘘だ。絶対嘘だ。その目は離したと同時にスクウェアスペルを叩き込む気の目だ。 彼女の「しつけ」なら見たことがある。ずっと昔ルイズを訪ねた時に見た。 何で子供を空高く吹き飛ばす必要があるんだ! あれでもまだ加減していると公爵は言っていた。本気なら確実に消される。間違いなく。 だが、どうする。ええいままよ!とワルドはグリフォンを加速させて高度を上げ、 アンリエッタを投げ飛ばし、出来うる限りの最高速度で逃げ去った。 種族的に、マンティコアよりグリフォンの方が速いはずである。 それに賭けてワルドは逃げ出した。 「姫殿下!」 ワルドを追いかけたかったが、姫殿下の命が最優先である為、 空から落ちるアンリエッタへと急いだ。当然、彼に魔法を放ってから。 先に遍在でも仕掛けておけば良かったのだが、 刺激して自暴自棄になられるともっと危険だと判断したのだ。 レビテーションの魔法をかけ、ゆっくりと落ちるアンリエッタを掴もうと近づき、 後少しで手が触れるというところだった。 カリーヌは、突然現れた影にアンリエッタが飲み込まれるのを見た。 そして影が消えると、そこには何も残っていなかった。 ワルドは奇跡的に魔法から逃れられたらしい。もう視界から消えていた。 自身の腕が鈍った事をカリーヌは痛感しつつ、後からやってきた衛兵達に状況を説明し始めた。 前ページ次ページジ・エルダースクロール外伝 ハルケギニア
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前ページCall of duty Undiscovered Country Torisutein 「枢機卿、敵の進行状況は。」 「現在、敵は隣接している地域を低速で侵攻しております。各村の避難状況は進んでおります、が。」 枢機卿は、立ち上がり、近くにある窓に杖を向けた、方向を指しているらしい。 「あの方面から火の手が見えるのも、時間の問題です。」 「過去の小競り合いの時出来た砦で何とかなってる状態でしょうか。」 枢機卿は小さく溜息を吐いた。 「姫、あんな小砦は防壁にすらなりません、固定化すら薄れ、守る力が無いのですから。」 「では皆、何をして……。」 「――、決死の覚悟で後退戦をしてる、と言ったとこでしょうか。ヴァリエール家領土は今だ一つの領土も占領されておらず、流石烈風カリン殿と言った所でしょうか。そこを取れない為に他ゲルマニア侵攻軍の足も停滞気味になっております。」 「烈風カリンの復活ですか、それがヴァリエール家に?…………ですが。」 「それも時間の問題――ゲルマニアも、酷な事をしますな。」 枢機卿と言われた男は、それから言を止めた。 言っては更に酷と思ったのであろう。そう、この王国は先代から当代に移ったばかりで政治体制が整っていない。その状況下を見越して、攻めてきたのだ。 「何故、攻めてきたのでしょう……。」 「ゲルマニアは金があれば平民も領土を手に入れ貴族になれます。 私の推測ですが、多分ゲルマニアは今過剰領土が無く、地位を持っている者共が反発、 それを見て体制を崩されかねないと見た帝が攻めて来たのでしょう、 目的はこの領土、なれば休戦や講和など無意味、奴等が狙っているものは我が国の滅亡、でしょうな。」 しかし、ここで疑問が一つゲルマニアにおいて、金を持つ者のその数は少ない。 なら、簡単に領土不足になる事は無い。原因は、他国の金持ちがゲルマニアの領土を買い占めたという事なのだろう。 「多分、ガリアが裏にいるのでしょうな。」 「何故ガリアが?」 おおよそ、娯楽か。 それ位にしか考えていないのであろう、あのガリア国王は 話し合いをしていると、伝令が姫と枢機卿のいる方向に走ってきた。 「伝令!ガリアから食料と銃。大砲、葡萄弾の援助が来ました!」 枢機卿の顔色が変わった。 「なるほど、我が国を実験場にしたいのか。」 兵器の性能は実戦を行い始めて分かる、ガリアは魔法先進国、全体技術力も。 トリステインとは比べ物にならない。 しかし、ガリア国内も落ち着いてはいない、ガリアが今戦争状態になったら、反体制派が何時反乱を起こすかが分からない、だからトリステインを利用したと考えた。 「物資は何処に送られているのだ。」 「既に城下町からここに届いて来ております。」 「砲までもこのような短期間で飛ばしてくるとはな……。」 計画的犯行と言うのはこのことかというかのように、苦笑を浮かべた。 「それともう一つ伝令があります、王国民皆兵令により現在後方の領民から城下町の16歳から28歳までの男を強制徴兵、現在数は1万となりましたが、何分鎧と剣の数が足りなくて……。」 「分かった、武器庫から全部出す、周りの武器屋からも徴収、職人に石斧でも作らせろ、総力戦だ、急ぎたまえ」 「了解しました!」 「これが戦争ですか。」 「戦争の恐ろしさはその間、国力を消耗するしかないという事です、この戦乱が終わった後、事後処理で地獄を見ますよ。」 姫は溜息を深くついた。 「これ以上の地獄が何処にあるというんです。」 ゲルマニア陸軍のある一連隊、ラ・ヴァリエール領内 ヴァリエール領中心にむけて行軍を続けていた。 「隊長!何でこんな小鳥みたいな相手に手間取ってるんです?」 隊長は青ざめていた、何故ならここにくるまでに何連隊もが敗走して自国領内に逃げ帰っていたからであった、撤退して二度目の行軍の輩もいる、そいつらもあまりよい表情をしてはいない。 「知らないって事は、とてもとても素敵な事だ、従軍を続けたまえ」 他の連隊からは良い戦果報告が届くのに、この領内からは潰走やら撤退やらしか報告されてないのだ。 全滅という報告が無いのがマシだが、もう宣戦布告から三日、後三時間で四日となる、他の戦線を押し上げる事が出来ないのもここが落ちないからだ。 ここを落として戦線を全面に押し上げなければ輜重隊が安全に物資を輸送出来ない そして包囲しようと各軍がこちらに向かえば、一隊一隊が領土まで逃げ帰る始末。 各個撃破されないよう、士官の数を増やせば士官が全員KIA 「もうかえりてーよ、長男になりたかった、パン屋継ぎたかったよ。」 「なんかいいました隊長?」 がくり肩を落としている時、前方に馬の群、騎兵が見えた、数は少数。 「偵察か?攻撃してくるようなら応戦をかけろ!」 気にせず行軍を続ける、すると前方の馬はこちらに向けて駆けてきた。 「応戦!槍兵を前に、槍兵は膝を突き構え!突進を防いだら横っ腹を叩け!」 言われたとおり、隊列の前に槍兵が並び、槍を構えた、馬はとがったもの、障害物には突進できない。 しかし、馬はそのまま突進をしてこず、減速、左右に広がる。 隊長は左に右に、視点を移した、すると突然隊長は後ろから殺気を感じた。 振り向こうとした瞬間、――隊長の頭は吹き飛んでいた。 「またメイジのいない隊……まったく、ゲルマニアにはメイジがいないのかしらね。」 マンティコアに乗った、高飛車な壮年から中年の女性が、杖を振り下げる。 ちなみに言うと、メイジが士官だった隊もこの女性が撃破した部隊の中にいたのだが、即効で殺してしまっていた為、メイジがいなかったようにみえたのだ。 「30年前より体が動かない、まったく。でも、ジャガイモの好色達を屠る程度、造作も無いわね。」 左右に広がった騎兵がもう一度合流をし、向きを反転してまた敵の隊列に駆けていった。 指揮系統の失った敵隊列は、馬に有効な槍兵を有効に扱う事が出来ない。 騎兵は敵の隊列と接触、既に指揮系統を崩された恐怖と、騎兵による蹂躙、敵の領域による未知、これらの要因が全て足され、士気など既になかった。 よって……。 「ば、ばけもんだぁっ!うわぁあぁ」 一人、また一人隊列から抜け出して撤退していく。 気づけば、もうその草原には騎兵と一騎のマンティコア、しかいなかった。 敵の阿鼻叫喚を背景に壮年から中年の女性が騎兵隊に命令を下した。 「追い討ちはよろしい、拠点に戻ります。縦列!」 その命令一つで、騎兵隊は即座に列を成し、拠点へと向かっていった。 「私は良くても数が少ない騎兵と馬の疲労度がピーク、私の魔法力も全盛期に比べて半分に落ちている、もって三日か……。」 その頃、ヴァリエール家屋敷 「カトレア、もう休みなさい。もう限界だろう。」 「まだ負傷者がいるなら、傷の手当がっぅ――ごほっ、ごほっ」 カトレアと言われた、病弱な女性は杖を負傷者の傷当たりに近づけると。 またスペルを唱える、傷は修復していくのだが、見て分かるように既に疲労はピークに達しており、限界が分かる。 「私の優しいカトレア、お前が死んでしまったら私はどうすればいい、お前に先立たれてしまったら父はどうすればいい。」 「ですが……、怪我してる人は、こんなにも――。」 突然体から力が抜け、床に倒れこみそうになるところを父と言われた男性が支えた。 「カトレアを部屋に。」 隣にいた執事にそれだけ言うと、執事は即座に動く。 カトレアが運ばれるのを見送ると、書斎に入っていった。 「さて、我が娘にこれだけの事をしたのだ、ゲルマニアの色痴呆共に教育してやらねばならんな。」 巨大な羊皮紙を取り出す、トリステインとゲルマニアの詳しく言うならトリステイン領土とゲルマニア領土付近の地図が書かれていた。 「現状の整理から始めよう、我が軍は訓練すら終えていない民兵が主、相手は傭兵と国軍の精兵、今は妻の恐ろしい活躍により退けてはいるが、妻も人間だ。疲労がある。国力も兵力も人口も10倍、戦略での勝利方法は耐えに耐え相手の国力が削がれ現体制が危うく継戦が出来なくなるのを待つ、それまで一切の侵攻を許さない、その侵攻を妨げる最後の砦がここ。さて、王国が馬鹿でなければ。兵の増援が来る、どれ位の規模か……敵国に侵攻して、相手から休戦を申し込んでもらうには二万以上の兵はいる。」 さて、そんな兵が急遽集まるかな。そう思いながら窓を見やる 「本国がもし、反撃作戦を練らず城下町での防衛作戦を取るのであれば、話は別だな。」 確かに、草原で接触した場合は地の利を受けれない、ただでさえ兵が少ない今。 それをする事が王国に出来るかどうか、そこが問題であった。 来なければ、最低後三日でこの地は落ちる、落ちれば士気の溜まった敵軍はきっと本国まで容赦ない進撃を続けるだろう。 「せめて後5000の兵があれば……、簡易防壁を作っている事に女子供を動員している現状は不味い。」 その窓から、土等で汚れた女子供が小さな松明を当てにただ土を積み上げていくのが見えた。 「伝統や欲に溺れてまともな政策も出さん結果がこれだ、貴族に対する年金に吸い取られて対ゲルマニア用防衛ライン予算も10年前から降りて来ない、何が空海軍だ、他に何処の国にも攻めれん軍事力の癖に無駄な数がありすぎるのだ」 実際、ここ数年トリステインの国予算はない状態に近かった。 それもそうだ、他国より人口が10分の1も少ない癖に、貴族の数だけは多く。 貿易という概念がまだ無かったとしても言って平原ばかり、伐採技術も進んでるわけでもなく、周辺に鉱山は無く、風石も無い。 農民や町人からそのまま貴族に流れているような状態、そんな状況で更に空海軍維持費に取られ、新艦建造に力を入れていた。 この小国が幾ら血を流しながら働いたとしても、他国空海軍に勝てる程の艦隊を作れる訳が無い、それなら。小型艦主体に建造し、陸軍費に回し、防衛体制を整えた方が合理的だ、というのに。 「あの王国の周りにいる馬鹿どもには理解できんのだろうな、マザリーニもマザリーニだ、周りの反発を恐れて、太った豚共の権力を崩せずにいる。」 その人にはその人の言い分があり、国からの言い分、農民からの意見、貴族の言い分がある。だから枢機卿にも、枢機卿なりの言い分がある。 それは分かってはいるが、このヴァリエール家当主の男は、憤慨せずには入られないのだ、同じ王族の血を引く者として。 前ページCall of duty Undiscovered Country Torisutein